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金融機関の融資・リスケ審査

実質自己資本

 これは、実質債務超過であるか否か、実質債務超過だとして、債務超過解消まで何年かかるか、という視点です。
 債務超過とは、貸借対照表(B/S)上の自己資本(純資産の部)がマイナスの状態をいい、理論上はすべての資産をもってしても全ての債務の返済ができないことを意味します。
 金融機関は原則として、このような状態の企業に対して新たに与信をすることはありません。
 しかし、債務超過だからと言って直ちに法的倒産するわけではないですし、中小企業はほとんどが過小資本で、金融機関との長期継続的な関係(メインバンク制)を前提に、資産の多くを借換えを前提とする借入金で賄い(擬似エクイティ、擬似自己資本、根雪などと言われています)、それで事業を回していることが多く、実質的には債務超過である中小企業は決して少なくありません。
 そこで、中小企業の債務償還能力を見る際には、実質債務超過であるか否かを一つの大きな分水嶺としつつ、仮に実質債務超過であった場合でも、短期的に債務超過の解消が見通せる場合には、与信対象として取り上げる可能性が出てきます。
 なお、以上では「実質」債務超過と述べておりますが、「実質」とはどういうことでしょうか。
 債務超過か否かは、B/Sの純資産の部を見れば一応は一義的明確に判定できます。
 しかし、中小企業の決算書は必ずしも実態を反映していないことが多いです。
 例えば、建物・構築物等の減価償却を実施していないとか、不良化した在庫や回収不能な売掛債権がそのまま簿価で残っているとかいうことが少なくありません。
 また、子会社やグループ会社と合わせて見ないと意味をなさない場合もあります。
 そこで、金融機関が中小企業の決算書を分析する際には、見た目の決算数値をそのまま採用するのではなく、上記のような各資産項目の再評価をしたり、子会社やグループ会社と合算・連結したりして、極力実態に近付ける作業をします。
 そうした再評価やグループ合算・連結等を施したB/Sを実態B/Sといい、実態B/Sにおける純資産の部を実質自己資本といいます。

融資条件設定

 上記の審査の結果、債務償還年数や実質自己資本から見て当該企業の債務償還能力が許容範囲に収まっている場合には、その程度、担保・保証による保全の状況、市場金利水準等を踏まえて、貸出金利や融資期間、据置期間などの融資条件を設定します。

その他の財務指標

 なお、金融機関の融資審査においては、上記の指標の他にも、例えば、損益分岐点、流動比率、長期固定適合率、資産回転率等、多くの指標の分析をします。
 しかし、これらの指標は、収益性や財務の安定性、資産の効率性等を示すものではありますが、決定的なものではありません。
 また、ROE、ROA、LTV、EBITDA倍率などといった指標もありますが、これらは基本的に事業価値、株主価値に関するものですので、事業買収資金のLBOファイナンスのような場合を除けば、中小企業融資の場面ではほとんど使わないと言ってよいでしょう。

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