元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

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金融機関の融資・リスケ審査

はじめに

 金融機関の最大の関心事は、融資資金の償還です。
 リスケも一種の与信ですから、同様に当てはまります。
 金利も重要ですが、いくら金利を高く取れても、元本が回収できなければ結局損失になるので、やはり元本の償還が最も重要です。
 では、企業の元本償還能力はどのように審査して判断するのでしょうか。
 以下、私の元銀行員としての企業融資審査の実務経験に基づいて述べますが、金融機関の目線はどこもそれほど大きく変わらないと考えられます。
 以下では、経営改善が必要な中小企業からの融資やリスケ要請に対応する場合(つなぎの運転資金ではなく比較的長期の与信)を念頭に置きますが、大まかに言えば、①事業の収益性とキャッシュフロー(CF)の見通し、②財務状況や資金繰りの安定性、③担保や保証による保全、の3点から判断すると言ってよいでしょう。
 判断する際の指標は、最終的には(1)債務償還年数、(2)実質自己資本、に集約されると言ってよいでしょう。
 なお、資金繰りが回ることは当然の前提です。

債務償還年数

 債務償還年数は、要返済債務÷年間キャッシュフロー(CF)により算出します。
 年数がどの範囲に収まっている必要があるかは、業種により異なります。
 製品サイクルの短い製造業などは短く、不動産業などは長いでしょう。
 分子の要返済債務は、既存の借入金等と今回融資やリスケする対象の借入金を合わせてみます。
 正常な運転資金や実質的に返済が劣後扱いとなっている経営者からの借入金などは控除したり、まとまった余剰現預金がある場合にはこれを控除した純債務の額でみる場合もあります。
 分母の年間CFは、要返済債務の返済に回せるだけの年間CFをいいます。
 決算書から算出する場合、正確には損益計算書(P/L)の当期純利益に非資金性の各費用・損失科目を戻し入れる形になりますが、簡便には、経常損益(みなしの法人税控除後)+減価償却費で概ね把握することができます。
 将来の見通しになりますので、ここで事業計画や経営改善計画を反映させます。
 その結果、債務償還年数が一定の範囲に収まっていればOKということになります。
 したがって、事業計画や経営改善計画は、この点を意識して策定する必要があります。
 例えば、ある企業の要返済債務が10億円で、許容される債務償還年数が10年であった場合、年間CFは1億円である必要があります。
 過去の実績からみて、期待される将来の年間CFが7000万円だとしたら、事業計画や経営改善計画により、年間CFを3000万円上乗せするものである必要があります。
 年間CFを引き上げるためには、収益性の向上が必要です。
 具体的には、売上高増加、粗利率改善、経費削減などの対策が必要になります。
 そして、これらの対策は、絵に描いた餅ではなく、実現可能性があることが必要です。
 設備投資のための新規融資の場合であれば、投資効果による収益の上乗せが期待できますが、既存借入金のリスケの場合は、経費削減が中心にならざるを得ないでしょう。
 そうでなくても、金融機関は計画を保守的に評価しますので、将来を見通しづらい売上高増加や粗利率改善よりも、比較的実現可能性が見通せる経費削減を重視します。
 売上高増加や粗利率改善の計画を出す場合には、相当の実現可能性の裏付けを示す必要があります。
 また、中小企業の場合は、経営者の資質も重視されます。経営者の能力や人柄、これまでの経営実績から見て、計画・対策を実現することが可能かどうか、という視点で評価されます。
 その際、計画・対策の策定・実行について弁護士の協力を得ているということも実現可能性を裏付ける要素の1つとして評価されるでしょう。

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