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Q&A 金融機関取引の基本

融資編

Q8

 金融機関に対し借入金返済を延滞していたところ、同金融機関から債権を譲渡したとの通知書が届きました。どうすればよいでしょうか。

A8

 法律上、債権者は原則として債権を自由に譲渡できます(民法466条1項本文)。
 したがって、金融機関も原則として貸付債権を自由に譲渡できます。
 ただし、譲渡人(ここでは金融機関)が債務者(ここでは当社)に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができないこととされています(同法467条1項)。
 この通知又は承諾を対抗要件といい、本件の金融機関がした通知は、この対抗要件を具備するためにした債権譲渡通知です。
 ちなみに、債権譲受人が債務者以外の第三者に債権譲渡を主張するためには、この債権譲渡通知は確定日付のある証書によってしなければなりません(同条2項)。
 確定日付は、公証人役場で1通700円で付けてもらうことができます。
 本件では、債務者たる当社との間のことですから、債権譲渡通知は確定日付のある証書によったものでなくても問題ありません。
 金融機関が第三者に貸付債権を譲渡するということは、通常あまりありません。
 ただ、債務者の業況が悪化して十分な回収が見込めなくなったような場合には、債権回収の手段として、ファンドやサービサー(●●債権回収などという名称の会社です)に債権売却(債権譲渡)をすることがあります。
 このような、不良債権処理・回収のためになされる債権譲渡をバルクセールといい、半期に1回程度、複数の債権をまとめて行います。
 当社宛て貸付債権について金融機関から債権譲渡通知書が届いた場合は、その後は譲渡先として記載されている者を債権者として扱うことになります。
 なお、債権譲渡通知は譲渡人がしなければなりません(同法467条1項)。
 したがって、見覚えのないところから「貴社宛ての貸付債権は当社が●●銀行から譲り受けました。今後は当社に返済してください」などという通知書が来たとしてもそれは無効ですので、その者を債権者として扱ってはいけません。
 なお、債権譲渡通知は、譲受人が譲渡人を代理してすることはでき、その場合は有効となります。
 いずれにしても、債権譲渡通知書が届いた場合は、速やかに金融機関に確認することが望ましいです。
 そのうえで、ファンドやサービサーなどの譲受人と今後の返済などについて交渉することになります。
 ファンドやサービサーは低廉な価格で債権を購入していますので、一定額の返済をした後には残債権をカットしてもらうという交渉も可能です。
 こうした債務圧縮の手法をディスカウントペイオフ(DPO)といい、事業再生の有力な手法の一つといえます。
 したがって、金融機関から債権譲渡通知書が届いた場合は、ある意味チャンスでもあるといえます。