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Q&A 金融機関取引の基本

融資編

Q7

 Q6により借入金と預金を相殺された場合、預金はどのように充当されるのでしょうか。

A7

 まず、法律上の原則から説明します。
 法律上、相殺が債務全額を消滅させるのに不足する場合の充当方法について細かく定められています。
 まず、借入金元本のほかに利息、費用があるときは、費用、利息、元本の順に充当されます(民法512条、491条1項)。
 借入金が複数本ある場合には、以下のようになります。
 ここでは、2本の借入金につきそれぞれ元本と未払利息がある場合を前提とします。
 まず、債務者は利息のうちどちらに先に充当するかを指定することができます(同法512条、488条1項)。
 さらに両利息に充当してなお余剰がある場合は、債務者は元本のうちどちらに先に充当するかを指定することができます(同法512条、488条1項)。
 通常、高金利口の借入金元本に先に充当するよう指定することになります。
 以上を指定充当といいます。
 もし債務者が指定充当をしない場合には、債権者がどこに充当するかを指定します(同法512条、488条2項本文)。
 この場合でも、債務者が直ちに異議を述べれば、指定充当がなされなかったことになります(同法512条、488条2項但書)。
 その場合は、以下の順序で充当されることになります。
 ①債務の中に弁済期のあるものと弁済期にないものがあるときは、弁済期にあるものを先に充当する(同法512条、489条1号)
 ②すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する(同法512条、489条2号)
 ③債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する(同法512条、489条3号)
 ④前2号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する(同法512条、489条4号)
 ②の「債務者のために弁済の利益が多いもの」とは、有利息と無利息では有利息、低利率と高利率では高利率、有担保と無担保では有担保、と解されるでしょう。
 以上が法律上の原則です。
 指定充当にせよ、法定充当にせよ、債務者に有利に規定されているといえます。
 しかし、金融機関からの融資においては、通常この原則は当事者間の合意により修正されており、この原則通りに処理されることは実際はほとんどないと言ってよいです。
 当事者間の合意とは、融資の際に締結される銀行取引約定書(銀取約定)や金銭消費貸借契約証書の各条項をいいます。
 銀取約定等では、「第●条(充当指定) 債務者企業または金融機関は、第●条による相殺または払戻充当により、債務者企業の債務全額を消滅させるに足りないときは、適当と認める順序方法により充当指定することができます。」などと規定しています。
 これにより、法律上では第1次的な充当指定権は債務者企業にあるところ、金融機関も同列の指定権を有することとされています。
 さらに、「第●条(充当指定) 金融機関が前項により充当指定したときは、債務者企業はその充当に対して異議を述べることができないものとします。」などと規定されています。
 これにより、法律上は認められている債務者企業の異議申立権が放棄されることとされています。
 したがって、債務者企業としては、金融機関から借入金と預金を相殺された場合は、速やかに充当指定を行うことが必要となります。