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Q&A 金融機関取引の基本

融資編

Q10

 Q8の後、同金融機関から今度は別の先に債権を譲渡したとの通知書(確定日付あり)が届きましたが、すでにQ8の最初の債権譲受人に一部返済してしまっていました。どうすればよいでしょうか。

A10

 法律上、債権者は原則として債権を自由に譲渡できます(民法466条1項本文)。
 したがって、金融機関も原則として貸付債権を自由に譲渡できます。
 そして、債権者は複数人に対して同じ債権を譲渡することができます。
 金融機関が同一の貸付債権を複数に譲渡するということ(債権の二重譲渡といいます)は通常考えられませんが、以前破綻した金融機関が破綻の直前に債権の二重譲渡をしていたことが実際にありましたので、一応取り上げておきます。
 ここは少しわかりにくいところですので、簡単に説明します。
 債権譲渡とは債権の売買です。
 売買は売主と買主の合意のみで成立し(同法555条)、売主が売買目的物の所有権を有しているかどうかは問題になりません。
 そのため、上記のような、複数に対する債権譲渡ができてしまいます。
 しかし、譲渡される債権は1つですので、どの譲受人がその債権を取得できるかを決めなければなりません。
 これを決めるのは、法律上、早いもの勝ちではなく、第三者対抗要件具備の有無及び先後によって決することとしています(同法467条)。
 この第三者対抗要件具備とは、具体的には、確定日付のある証書による債権譲渡通知をいいます(同条2項)。
 確定日付は、公証人役場で1通700円で付けてもらうことができます。
 (動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(いわゆる動産・債権譲渡特例法)4条1項に基づく債権譲渡登記によってもこの第三者対抗要件具備をすることはできますが、ここでは省略します。)
 したがって、本件のような、第一譲受人(A社とします)に対する債権譲渡の通知には確定日付がなく、第二譲受人(B社とします)に対する債権譲渡の通知には確定日付があった場合は、B社が債権を確定的に取得しますので、当社はB社を債権者として扱わなければなりません。
 もっとも、B社に対する債権譲渡の通知が届く前に、すでにA社に対して一部返済をしてしまっていた場合は、その返済は弁済として有効ですので、改めてB社に支払う必要はありません(大審院昭和7年12月6日判決)。
 よって、本件では、すでにA社にした一部返済は弁済として有効ですが、B社に対する債権譲渡通知書到達以後はB社を債権者として扱い、B社に対して残債務の返済をすることとなります。