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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q6

 当社は、貸ビルを所有し、テナントに賃貸しております。ビル取得資金は金融機関から借り入れ、抵当権を設定しています。金融機関への約定返済を延滞した場合、金融機関から賃料を差し押さえられるのでしょうか。

A6

 ここでいう賃料の差し押さえとは、抵当権に基づく物上代位の差押えです。
 物上代位とは、「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。」(民法304条1項本文)というもので、これが抵当権にも準用されて認められています(同法372条)。
 かつては、抵当権の場合は賃料に対する物上代位は否定する見解もありましたが、最高裁はこれを全面的に認め(最高裁平成元年10月27日判決)、現在では一般的に利用されています。
 物上代位の行使の方法は、「ただし、抵当権者(筆者注:先取特権者から読み替え)は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」(同法372条、304条1項但書)とされており、本件では賃料が賃貸人に払われる前に差押えをする必要があります。
 そして、物上代位の差押えは、債権その他の財産権に対する担保権実行と同様の手続によります(民事執行法193条1項後段)。
 債権その他の財産権に対する担保権実行は、担保権の存在を証する文書を裁判所に提出することにより開始されます(同条項前段)。
 抵当権に基づく物上代位の場合、この担保権の存在を証する文書(法定文書といいます)は、不動産の登記事項証明書で足ります(同法181条1項3号)。
 裁判所は差押え命令発令の申立てを審査したうえで、差押命令を発します。  差押命令では、債務者(ここではビル賃貸人)に対しては債権の取立てその他の処分が禁止され、第三債務者(ここではビル賃借人)に対しては債務者への弁済(賃料の支払)が禁止されます(同法193条2項、145条1項)。
 そして、差押命令は債務者と第三債務者に対して送達され(同法193条2項、145条3項)、その効力は第三債務者に送達された時に生ずるので(同法193条2項、145条4項)、その後は賃借人に対し賃料支払を催促したり、賃料の支払を受領することはできません。
 また、差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発するので(同法193条2項、145条2項)、事前の前触れもなく突然命令が送達されることになります。
 もし命令に不服があれば、裁判所に不服申し立てをすることができます(同法193条2項、182条、145条5項)。
 債権者(ここでは金融機関)は、債務者(ここではビル賃貸人)に対し差押命令が送達された日から1週間を経過したら、第三債務者(ビル賃借人)から直接賃料を取り立てることができます(同法193条2項、155条1項)。
 このようにして金融機関は、ビル賃貸人が有する賃料債権から回収することになります。