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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q5

 金融機関の抵当権が登記留保で設定されていたことを知りながら土地を購入しました。この場合、どうなりますでしょうか。

A5

 通常、金融機関が企業などに融資をする際、不動産があれば抵当権を設定し登記をします。
 ただし、その企業の信用力に問題がなく返済に懸念が少ないような場合には、登記に伴う登録免許税の節約などのため、抵当権設定だけして登記はしない(登記留保)とすることがあります。
 抵当権の設定は物権の変動ですので、登記をしなければ第三者には対抗できません(民法177条)。
 この登記を対抗要件といいます。
 そして、ここでいう第三者とは、物権変動について知っていたかどうかは問われませんので、抵当権設定を知りながら購入した第三者(悪意の第三者といいます)も含まれます。
 したがって、Q4と同じ結論となります。
 すなわち、その土地に抵当権設定登記がない以上、抵当権者たる金融機関は第三取得者たる買主に抵当権を対抗することができず、買主は抵当権が存在しないものとして完全にその土地の所有権を取得できます。
 もっとも、物権変動につき悪意であり、かつ、対抗要件がないことを主張することが信義に反するような場合には、例外的にここでいう第三者には含まれないとされています(最高裁昭和43年8月2日判決)。
 このような第三者を、背信的悪意者といいます。
 背信的悪意者とは、例えば、不動産の二重譲渡の場合に、第一譲受人に高値で売り付ける目的で、第一譲渡の事実を知りながら売主から買い受けた第二譲受人のような場合をいいます。
 背信的かどうかについては、明確な基準がありませんので、事案毎の様々な事情を総合的に考慮して判断されることになります。
 その結果、買主が背信的悪意者とされるような場合には、金融機関から抵当権設定を主張されることになり、抵当権の存在を甘受しなければならなくなります。
 なお、不動産二重譲渡の事案ですが、背信的悪意者といえるような第二譲受人が横領罪の共同正犯に当たるとされた裁判例があります(福岡高裁昭和47年11月22日判決)。