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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q3

 Q2の場合において、高額の敷金を入れているので、家賃の支払いを止めたいのですが、問題はありますでしょうか。

A3

 敷金について法律上の定義はありませんが、判例上、「家屋賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するものと解すべき」であるとされております(最高裁昭和48年2月2日判決)。
 そうすると、ビル入居者は、ビルオーナーの資金繰り悪化により敷金の返還に不安がある場合は、敷金の保全及び実質的な回収のための自衛措置として、家賃の支払いを止めるということは可能です。
 もっとも、家賃の滞納はビルオーナーとの間の賃貸借契約の債務不履行(履行遅滞)となり、立退きを求められる場合がありますので、引き続き入居したい場合は対応として適切ではないかもしれません。
 しかし、Q2で説明したとおり、ビルの抵当権が実行され、第三者にビルの所有権が移転し登記がされ、新ビルオーナーから立退きを求められれば、入居者は結局は立ち退かざるを得ないことになりますので、その辺りの見極めにもかかってきます。
 また、抵当権実行の方法として、賃料に対する物上代位という方法があります(民法372条、304条1項、最高裁平成元年10月27日判決)。
 これは、抵当権者である銀行が賃料を差し押さえ、賃料収入から債権回収を図ろうとするもので、入居者は、通常の差押えと同様、銀行から取立されれば、銀行に対して賃料を支払わなければならなくなります(民事執行法193条1項後段)。
 (物上代位の差押の手続については、Q6をご参照ください。)
 もっとも、敷金がある場合に、ビルを明け渡した場合は、明渡時の未払い賃料債務は敷金の限度で敷金に当然に充当されて消滅し、この未払い賃料債務(銀行から見れば賃料債権)に対する物上代位は空振りに終わります(最高裁平成14年3月28日判決)。
 したがって、入居者は、敷金の限度で家賃の支払いを停止することにより、未払い賃料債務の当然充当という形で実質的な敷金の回収ができることになります。
 なお、物上代位と似たものとして、担保不動産収益執行(民事執行法180条2項)という方法もありますが、あまり活用されていないので、ここでは省略します。