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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q12

 抵当権実行による競売で土地を購入したいのですが、現土地所有者が所有する未登記の地上建物が建っています。土地購入後にこれを取り壊すことはできますでしょうか。

A12

 まず、土地と建物は別個の不動産なので(民法370条本文)、土地競落人が地上建物の所有権を取得するわけではありません。
 地上建物があくまで他人の所有物である以上、これを土地競落人が勝手に取り壊すことはできません。
 しかし、所有権には排他的支配性がありますので(同法206条)、土地所有者は土地の占有者に対し、土地の返還を請求することができます。
 この場合、土地競落人としては、地上建物所有者に対し、建物を取り壊して土地を明け渡すことを求めますが、これに応じない場合は、建物収去土地明渡請求訴訟を提起することになります。
 もっとも、土地抵当権設定時に地上建物があり、土地と地上建物が同一所有者に属していれば、地上建物につき法定地上権が成立します(同法388条)。
 地上権とは、他人の土地を使用する権利(物権)であり、当事者間の合意により成立します(同法265条)。
 なお、地上権は土地賃借権や借地権と似ていますが、これらの権利(債権)と異なり、譲渡が自由であることや第三者による妨害を排除することができるなど、より強力な権利です。
 法定地上権とは、当事者間の合意によらず、法律上当然にこの地上権が発生するものです。
 したがって本件では、抵当権設定時に地上建物があり、土地と地上建物が同一所有者であれば、法定地上権が成立し、競落人たる土地所有者は地上建物所有者に対して建物収去土地明渡を請求することができません。
 他方、上記の要件を充たさなければ(例えば、土地抵当権設定後に地上建物が建てられた、抵当権設定時は土地と建物は別の所有者であった等)、法定地上権は成立せず、競落人たる土地所有者は地上建物所有者に対して建物収去土地明渡を請求することができます。
 なお、抵当権設定時に土地と地上建物が同一所有者に属してさえいれば、その後に所有者が変更した場合でも法定地上権は成立します(大審院大正12年12月14日判決)。
 逆に、抵当権設定時に土地と地上建物の所有者が異なっていれば、その後同一の所有者に属したとしても法定地上権は成立しません(最高裁昭和44年2月14日判決)。
 もっともこの場合は通常借地権が成立しているはずで、このときの処理についてはQ16をご参照ください。
 なお、以上における同一の所有とは、登記名義ではなく実質で判断されます(最高裁昭和48年9月18日判決、最高裁昭和53年9月29日判決)。