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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q10

 金融機関からの借入のため自社所有工場の土地と建物に抵当権を設定しました。建物内の機械設備や什器備品なども抵当権の対象となっているのでしょうか。

A10

 法律上、抵当権の効力が及ぶ範囲については、「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」とされています(民法370条本文)。
 しかし、この「付加一体物」の範囲が具体的にどこまでかははっきりしていません。
 まず、付合物というものがあり、これが付加一体物に含まれることは争いがないといえます。
 付合物とは、「不動産に従として付合した物」で、その所有権が不動産の所有権に吸収されるものです(同法242条本文)。
 建物の付合物としては、例えば、雨戸や入口扉、壁紙などがあります。
 次に、従物というものがあり、これは当然に付加一体物に含まれるとはされていません。
 従物とは、「物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。」(同法87条1項)、「従物は、主物の処分に従う。」(同条2項)とされているものです。
 従物は、付合物と異なり、あくまで独立して所有権の対象となるものです。
 例えば、刀における鞘であり、建物における畳やエアコンなどです。
 まず、抵当権設定時に存在した従物には抵当権の効力が及ぶとされています(大審院大正8年3月15日判決)。
 具体例としては、石灯籠や取り外しができる庭石等は従物だが、土地抵当権の効力が及ぶとされました(最高裁昭和44年3月28日判決)。
 また、ガソリンスタンド建物の地下タンク、ノンスペース型計量機、洗車機等の諸設備は建物の従物として、建物抵当権の効力が及ぶとされました(最高裁平成2年4月19日判決)。
 抵当権設定後に生じた従物についても抵当権の効力が及ぶとする考え方が有力です(東京高裁昭和53年12月26日判決)。
 もっとも、本件のような工場の場合、建物は通常いわゆるドンガラで、建物内の機械設備や什器備品などが建物の従物なり付加一体物として抵当権の効力が及ぶということは難しいと考えられます。
 このような場合は実務上、建物内のこれらの動産には別途譲渡担保権が設定されることになります。
 また、工場抵当法に基づく工場抵当や工場財団抵当という方法により、これらの動産も含めた形で抵当権を設定・登記することもあります。