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Q&A 金融機関取引の基本

担保編

Q1

 借入金を返せないと、担保に入れている土地はどうなるのでしょうか。

A1

 まず、法律上の手続から説明します。
 ここでは、銀行からの借入金の担保として自社所有の土地に抵当権が設定され登記されているケースを想定します。
 抵当権の実行は、民事執行法に基づき、土地を競売等によって強制的に換価し、その代金を抵当権者に配当するという形で行われます。
 抵当権の実行は、抵当権の存在を証明する文書(法定文書)を添付して裁判所に申立をすることで開始されます(民事執行法2条、181条)。
 法定文書というとおおげさに聞こえますが、法務局で誰でも取得できる不動産登記事項証明書で足ります(同法181条1項3号)。
 抵当権は設定するが登記はしないという場合(登記留保)はもちろん、仮登記にとどまる場合(同条項号括弧書)も、不動産登記事項証明書による方法では抵当権実行を開始させることはできません。
 抵当権実行が開始されれば、後は裁判所により競売、換価、配当がなされます(競売によらず、不動産が生み出す収益を弁済に充てる不動産収益執行という方法もありますが(同法180条2号)、ここでは省略します。)。
 なお、銀行の場合はまずないと思いますが、実際は借入金が延滞に陥っていなかったり、すでに完済しているような場合でも、不動産登記事項証明書があれば抵当権実行は開始されてしまいますが、このような場合には債務者企業は手続の中で異議申し立て(執行異議といいます。同法182条)をして争うことになります。
 以上が法律上の抵当権実行手続になります。
 しかし、実際には銀行がこの方法で抵当権実行をしているケースはそう多くないと思います。
 銀行は貸付金の回収の最大化が目標ですので、売却価格が低くなりやすい競売は敬遠されがちです。
 むしろ、裁判所を通さずに入札等により最も高額の買い手に売却する任意売却の方が多く活用されております。
 また、より簡便に、抵当権付きで貸付債権をファンドやサービサーに売却するという方法(バルクセールと言います)もとられております。
 いずれの場合でも、債務者企業にとっては土地を手放すことになるのは変わりません。
 ただ、少しでも高く売れれば、その分銀行が抵当権から回収できなかった残債務が減りますので(極端な場合、抵当債務を完済して売却代金から一部戻ってくるということも)、債務者企業にとってもなるべく高く売ってもらうことにメリットがあり、円滑な任意売却に協力するということに意義が見出せます。