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Q&A 金融機関取引の基本

事業再生・倒産編

Q9

 デットエクイティスワップ(DES)による事業再生は、どのような手続きが必要でしょうか。

A9

 デットエクイティスワップ(DES)は、「債務の株式化」といわれるもので、文字通り、債務を株式に転換するというものです。
 これにより過剰債務を減らし、自己資本を増やすことができ、債務超過の解消など財務の改善を図ることができるので、事業再生の有力な手法の一つとされています。
 もっとも、当然のことながら、債務者企業がDESをしたいと思ってできるわけではなく、債権者がこれに応じることが必要です。
 債権者としてみれば、弁済の優先順位の高い債権を配当が劣後される株式に転換するわけですから、地位の悪化を意味しますので、通常これに応じることはありません。
 しかし、債務者企業を事業再生すべき一定の合理的理由がある場合には、例外的に応じる場合があります。
 こうした、金融機関が債務者企業の事業再生に応じる際の考え方や基準については、事業再生をご参照ください。
 DESはハードルは高いですが、単なる債権カットよりは債権者にとって経済合理性もありますので、比較的受け入れ余地があるといえます。
 次に、債権者がDESに応じるとした場合の、法的な手続きについて以下説明します。
 DESは、会社法上、債権の現物出資として位置づけられています。
 現物出資とは、募集株式の払込を金銭ではなく現物資産(DESの場合は既存の債権)により行うというもので、通常の新株発行(募集株式の発行)の手続に基づいてなされます。
 募集株式の発行には、株主割当と第三者割当がありますが、DESの場合は第三者割当ですので、以下第三者割当の場合を前提とします。
 また、手続きは会社の機関設計により異なりますが、ここでは、中小企業において最も典型的な、全株式譲渡制限会社(非公開会社)・取締役会設置会社を前提とします。
 その上で、まずは非公開会社・取締役会設置会社における第三者割当増資(金銭出資の場合)の手続について説明します。
 会社はまず、株主総会の特別決議により募集事項(募集株式の数、払込金額又はその算定方法、現物出資の場合はその旨・財産の内容・価額、払込期日又は期間、増加する資本金及び資本準備金に関する事項)を定めます(会社法199条1・2項、309条2項5号)。
 (なお、株主総会の特別決議により、上記募集事項の決定を取締役会に委任することができます(同法200条1項、309条2項5号))。
 次に会社は、募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、株式会社の商号、募集事項、払込取扱金融機関、その他法務省令で定める事項を通知します(同法203条1項)。
 この募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、氏名又は名称及び住所、引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に交付します(同条2・3項)。
 会社は、割り当てる募集株式の数を定め、申込者に通知します(同法204条)。
 これにより申込者は募集株式の引受人となり(同法206条)、払込期日又は期間内に払込取扱金融機関において払込金額の全額を払い込み(同法208条1項)、株主となります(同法209条)。
 以上が金銭出資の場合の第三者割当増資の手続ですが、現物出資の場合は、手続きが付加されます。
 現物出資の場合は、上記募集事項の決定後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し検査役の選任を申し立てなければなりません(同法207条1項)。
 会社は検査役に対し報酬を払い(同条3項)、検査役は調査の結果を裁判所に報告します(同条4項)。
 もし現物出資財産の価額が不当と認められた場合は、裁判所はこれを変更する決定をします(同条7項)。
 このように、現物出資の場合は検査役調査が義務付けられており、手続が重くなります。
 もっとも、一定の要件を充たすDESの場合は、さらにこの特例として、検査役調査が不要とされています。
 具体的には、現物出資する債権の弁済期が到来しており、かつ、募集事項として定めた価額(同法199条1項3号)が当該債権の簿価を超えない場合です(同法207条9項5号)。
 例えば、弁済期の到来している1億円の貸金債権を現物出資財産として、1億円の株式を取得するような場合は、検査役の調査が不要となります。
 以上が本来のDESの手続ですが、より簡便に実質的には同様の効果を得る方法として、金銭の払込みによる出資をして、その払い込まれた金銭をもって同額の既存の債権を弁済するという方法もあります(擬似DESといいます)。
 なお、DESは実質的には債務免除ですので、益金課税の問題が生じます。