元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

トップページ > Q&A事業再生・倒産編 > Q3

Q&A 金融機関取引の基本

事業再生・倒産編

Q3

 事業譲渡で優良事業を切り離して事業再生をしたいのですが、どのような手続きが必要でしょうか。

A3

 事業譲渡とは、判例上、「営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること、詳言すれば、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営利的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条(筆者注:現会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」とされています(最高裁昭和40年9月22日判決)。
 有機的一体として機能する財産とはいわゆるゴーイングコンサーンをいい、単なる事業用財産または権利義務の集合の譲渡はこれに当たらないとされ、ゴーイングコンサーンといえるためには、譲渡会社の製造・販売等に係るノウハウ等の譲受人による承継が必要であり、単に承継動産・不動産等を用いて同種の事業が行われるだけでは足りないと考えられています(江頭憲治郎「株式会社法(第2版)」859頁、旭川地裁平成7年8月31日判決)。
 かかる観点で、当該譲渡が事業譲渡に当たるかどうかを判断することになります。
 なお、譲渡する資産の帳簿価額が譲渡会社の総資産額の5分の1以下の場合は、この事業譲渡には当たらないとされています(会社法467条1項2号。簡易事業譲渡)。
 事業譲渡に当たる場合は、株主総会の特別決議による必要があります(同条項1・2号、309条2項11号)。
 そして、この場合は、反対株主の株式買取請求権が認められます(同法469条1項)。
 反対株主とは、事業譲渡をするための株主総会に先立って当該事業譲渡に反対する旨を会社に対し通知しかつ当該株主総会において反対した株主又は当該株主総会において議決権を行使することができない株主をいいます(同条2項1号)。
 事業譲渡をする会社は、事業譲渡の効力発生日の20日前までに株主に対し事業譲渡をする旨を通知(一定の場合は公告で可(同条4項))しなければなりません(同条3項)。
 反対株主から株式買取請求権を行使された場合は、会社はその株式を公正な価格で買い取るべき義務が生じます(同条1項)。
 なお、事業の譲受会社が譲渡会社の総株主の議決権の10分の9以上を有するとき(特別支配会社といいます)の場合は、上記の株主総会特別決議は要しないとされています(同法468条1項。略式事業譲渡)。
 この略式事業譲渡の要件については、一定の場合、譲受会社が譲渡会社の総株主の議決権の3分の2以上を有するとき(特定特別支配会社といいます)に緩和されています(産業活力再生特別措置法20条1項)。
 以上の必要な株主総会決議を経ないで事業譲渡を行った場合は、その譲渡契約は無効となります(最高裁昭和61年9月11日判決)。
 なお、上記の手続を一応履践した場合でも、譲渡会社の債権者を害する詐害的な事業譲渡とされるようなときには、詐害行為取消権(民法424条)の行使により事業譲渡が取り消される可能性もあります(会社分割の詐害行為取消についての最高裁判例(最高裁平成24年10月12日判決)については、Q&A 金融機関取引の基本 事業再生・倒産編Q2にて判決の紹介と簡単なコメントを記載しておりますので、適宜ご参照ください)。
 次に、事業譲渡に当たらない場合ですが、この場合でも「重要な財産の処分」に当たる場合は、原則として取締役会の決議が必要となります(取締役会設置会社の場合。会社法362条4項1号)。
 「重要な財産の処分」に当たるかどうかは、判例上、「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべき」とされています(最高裁平成6年1月20日判決)。
 こうした事情を踏まえて、取締役会決議の要否を判断する必要があります。
 なお、株主総会や特別取締役による取締役会の決議事項とする余地があることは、Q&A 金融機関取引の基本 保証編Q3の場合と同様です。