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Q&A 金融機関取引の基本

事業再生・倒産編

Q13

 新スポンサーに優先株を発行して資本増強をしたいのですが、どのような手続が必要でしょうか。

A13

 いわゆる「優先株」とは、一般に、議決権がない代わりに剰余金配当や残余財産分配が普通株よりも優先する株式のことを言い、債務超過や過小資本の企業が新スポンサーにこれを発行して資本増強することにより事業再生を図る場合等に用いられます。
 もっとも、現行会社法下ではこの優先株という用語はなく、種類株の一種としてこのような内容の株式が規定されています。
 種類株式とは、一定の事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を言います(会社法108条1項本文)。
 ここでいう一定の事項とは、具体的には、剰余金の配当(同条項1号)、残余財産の分配(同条項2号)、株主総会の議決権(同条項3号)、譲渡制限(同条項4号)、取得請求権(同条項5号)、取得条項(同条項6号)、全部取得条項(同条項7号)、拒否権(同条項8号)、役員選任(同条項9号)をいいます。
 したがって、いわゆる優先株とは、ここでいう剰余金の配当や残余財産の分配について他の株式に優先して受け取る権利があり、株主総会の議決権が制限された種類株式をいうことになります(同条項1~3号)。
 (もっとも、種類株式の設計は自由ですので、剰余金の配当や残余財産の分配が優先しつつ、議決権も有するという種類株式も当然ありえます。)
 優先株を発行する場合には、まず、以下の各事項及び及び発行可能種類株式総数を定款で定めます(同条2項)。
 この各事項とは、剰余金配当優先株式の場合は、種類株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容(同条項1号)、残余財産分配優先株式の場合は、種類株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容(同条項2号)、議決権制限株式の場合は、株主総会において議決権を行使することができる事項、議決権行使条件を定めるときはその条件(同条項3号)、をいいます。
 この定款の変更は、株主総会の特別決議によることが必要となります(同法466条、309条2項11号)。
 なお、優先株の機動的な発行を可能とするため、配当額その他法務省令で定める事項(会社法施行規則20条1項1~3号)の全部または一部については、当該種類株式発行時までに株主総会(取締役会設置会社では株主総会又は取締役会)の決議によって定める旨を定款で定めることもできるとされています(同法108条3項)。
 この場合には、その内容の要綱を定款で定めることになります(同条項)。
 その上で、新スポンサーに対する第三者割当増資の決議をすることになります。
 決議すべき内容は、募集株式の数、払込金額又はその算定方法、現物出資の場合はその旨・財産の内容・価額、払込期日又は期間、増加する資本金及び資本準備金に関する事項(これらを募集事項といいます)です(同法199条1項)。
 この決議は、非公開会社(全株式につき譲渡制限が付されている会社)の場合は株主総会特別決議により(同条2項、309条2項5号。取締役(会)に委任も可(200条1項))、公開会社(発行する株式の全部又は一部の株式につき譲渡制限が付されていない会社。同法2条5号)の場合は取締役会決議により(同法201条1項)、行います。
 ただし、公開会社の場合でも、有利発行の場合は、原則通り、株主総会特別決議による必要があります(同法201条1項、199条3項)。
 その上で、公開会社の場合は、払込期日の2週間前までに、上記募集事項を株主に対し通知又は公告します(同法201条3・4項)。
 次に会社は、募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、株式会社の商号、募集事項、払込取扱金融機関、その他法務省令で定める事項を通知します(同法203条1項)。
 この募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者(新スポンサー)は、氏名又は名称及び住所、引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に交付します(同条2・3項)。
 会社は、割り当てる募集株式の数を定め、申込者(新スポンサー)に通知します(同法204条)。
 これにより申込者(新スポンサー)は募集株式の引受人となり(同法206条)、払込期日又は期間内に払込取扱金融機関において払込金額の全額を払い込み(同法208条1項)、株主となります(同法209条)。
 なお、公開会社の場合、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えるに至ったときは、会社は直ちに議決権制限株式の数を2分の1以下にするための必要な措置をとらなければならないとされています(同法115条)。
 なお、公開会社における第三者割当増資の決議については、現在法制審議会において規制を強化する方向の会社法改正の議論がなされています。
 方向性としては、引受人が議決権の過半数を有することとなるような場合には株主総会決議を要するというものです(法務省民事局参事官室「会社法制の見直しに関する中間試案」6頁)。
 この会社法改正についても今後注意が必要です。