元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

トップページ > Q&A事業再生・倒産編 > Q11

Q&A 金融機関取引の基本

事業再生・倒産編

Q11

 民事再生を申し立てると、金融機関に設定した抵当権はどうなるのでしょうか。実行されるのでしょうか。

A11

 民事再生法上、抵当権は別除権とされ、再生手続によらないで行使することができます(民事再生法53条1・2項)。
 抵当権の実行の手続については、Q&A 金融機関取引の基本 担保編Q1をご参照ください。
 しかしそうなると、事業継続のため必要な不動産(工場、店舗、賃貸用不動産等)を抵当権実行により失いかねず、再生どころではなくなってしまうおそれがあります。
 そこで再生債務者(この意義についてはQ10をご参照ください)としては、別除権者との間で、被担保債権を分割弁済することを約束して別除権者が抵当権を実行しない旨の合意(別除権協定といいます)を得ることを目指します。
 この別除権協定締結が困難な場合は、民事再生法上の手段を検討することになります。
 まず、再生手続開始前からとれる手段として、担保権実行中止命令があります。
 担保権実行中止命令は、「裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立て又は職権で、相当の期間を定めて、第53条第1項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる」(同法31条1項)とされています。
 前段の要件の「再生債権者の一般の利益に適合し」とは、担保権実行が中止されることで事業継続が可能となり、それにより得られるキャッシュフローによる配当が清算配当を上回る場合などをいいます。
 同命令が発令されると、相当の期間、抵当権実行としての競売手続が中止されます。
 なお、抵当権に基づく物上代位の差押については、中止命令を発することができるのは例外的な事情がある場合に限るとしたうえで、発令申立を却下した裁判例があります(大阪高裁平成16年12月10日決定)。
 次に、再生手続開始後には、再生債務者は裁判所に対し担保権消滅許可の申立をすることができます。
 担保権消滅許可は、「再生手続開始の時において再生債務者の財産につき第53条第1項に規定する担保権が存する場合において、当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、再生債務者等は、裁判所に対し、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる」(同法148条1項)とされています。
 この要件「当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるとき」とは、当該資産が本業に使われて事業継続のため必要なキャッシュフローを生み出しているような場合をいい、遊休資産のような場合を排除する意味です。
 なお、事業を継続するために抵当不動産(店舗)を売却する場合でも、この要件に該当するとして担保権消滅許可が認められた裁判例もあります(名古屋高裁平成16年8月10日決定)。
 (なお、この裁判例に対しては、担保権消滅許可の適用範囲を大幅に拡大する解釈であるとの批判もあります。)
 またこれとは別に、土地付き戸建分譲業者の事案において、「事業継続不可決要件を充たす財産とは、担保権が実行されて当該財産を活用できない状態になったときには再生債務者の事業の継続が不可能となるような代替性のない財産であることが必要である」としたうえで、分譲すべき戸建住宅の敷地につき事業継続不可決要件を充たしているとして担保権消滅許可を認めた裁判例もあります(東京高裁平成21年7月7日決定)。
 担保権者は、申立書に記載された目的財産の価額が不相当であるとして異議があるときは、裁判所に対し価額決定の請求をすることができます(同法149条)
 この場合裁判所は、当該請求を却下する場合を除き、評価人を選定して財産の評価を命じ、その評価に基づき財産の価額を決定します。
 こうした手続きを経て目的財産の価額が確定したときは、再生債務者はその金額を裁判所に納付します(同法152条1項)。
 抵当権は、この金銭の納付があった時に消滅し(同条2項)、抵当権設定登記は抹消されます(同条3項)。