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Q&A 金融機関取引の基本

事業再生・倒産編

Q10

 民事再生による事業再生は、どのような手続きが必要でしょうか。

A10

 以下、債務者が法人の場合の標準的な手続を前提とします。
 民事再生による事業再生は、管轄の裁判所に民事再生手続の開始を申し立てるところからはじまります。
 民事再生手続が開始するための要件(再生手続開始原因といいます)は、①債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、②債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき、のいずれかです(民事再生法21条1項)。
 ①の「破産手続開始の原因となる事実」とは、支払不能又は債務超過をいいます(破産法15条1項、16条1項)。
 債務者は、申立をするときは、上記再生手続開始原因の事実を疎明しなければなりません(民事再生法23条1項)。
 裁判所が定める費用の予納も必要となります(同法24条)。
 また、以下の申立棄却事由のいずれかに該当する場合は申立が棄却され、手続は開始されません。
 申立棄却事由は、①上記費用の予納がないとき、②裁判所に破産又は特別清算手続が継続し、その手続きによることが債権者の一般の利益に適合するとき、③再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき、④不当な目的で再生手続開始申立がされたとき、その他申立が誠実にされたものでないとき、です(同法25条)。
 裁判所は、上記再生手続開始原因がある場合は、上記申立棄却事由がない限り、再生手続開始を決定します(同法33条1項)。
 東京地裁民事20部の標準スケジュールによれば、申立から開始決定までは1週間とされています。
 債務者は、申立から開始決定までの間に債権者説明会を開催します(法律上義務付けられている手続ではありませんが)。
 裁判所は、開始決定と同時に、債権届出期間及び債権調査期間を定めます(同法34条1項)。
 債務者は、開始決定により「再生債務者」(同法2条1号)となります。
 「再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産を管理し、若しくは処分する権利を有する」(同法38条1項)ので、法人の代表者は開始決定後も引き続き経営に当たりますが(この経営者を「DIP(Debtor in Possession)」といい、破産と異なる特徴です)、開始決定を境に法的な地位は変わります。
 すなわち、「再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う」(同条2項)とされており、これを再生債務者の公平誠実義務といいます。
 また、再生債務者には、双方未履行の契約(例えば、開始決定前に売買契約を締結していたが、目的物引渡しと代金支払いが未履行のもの)を解除するか履行するかを選択する権限が与えられるなどします(同法49条)。
 このように債務者は、開始決定により再生債務者となり、第三者的な性質を有することになります。
 また裁判所は、必要があると認めるときは、監督委員を選任します(同法54条1項。監督命令)。
 東京地裁では、全件監督命令が発令される運用となっています。
 監督委員には、通常弁護士が選任されます。
 監督命令が発令された場合には、監督委員の同意を得なければ再生債務者がすることができない行為が指定され(同条2項)、この同意を得ないでした行為は無効となります(同法4項)。
 開始決定後、債権届出(同法94~97条)、債権調査(同法99~113条)、財産評定(同法124条)がなされたうえで、再生債務者は再建計画案を作成をして裁判所に提出します(同法163条1項)。
 再生計画案の提出期限は、債権届出期間の満了後裁判所が定める期間内となりますが(同条項)、東京地裁の場合、開始決定から3ヶ月後くらいとなっています。
 裁判所が再生計画案を決議に付する決定(同法169条。付議決定)をした後、債権者集会が開催されて再生計画案が決議されます(同法170条)。
 再建計画案の可決要件は、議決権者の過半数の同意があり(頭数要件)、かつ、議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意があること(議決権額要件)、です(同法172条の3)。
 東京地裁では、裁判所の付議決定から債権者集会までの期間は1か月半程度となっています。
 再生計画案が可決されると、裁判所は一定の場合を除き、計画案を認可する決定をします(同法174条)。
 再生計画案は、認可決定に対する不服申立期間の経過や不服申立の却下又は棄却決定の確定により認可決定が確定したときに、効力を生じます(同法176条)。
 これにより、再生債務者は再生債権を免責されます(同法178条本文)。
 再生計画が遂行されたとき、または再生計画認可決定確定時から3年を経過した時に、再生手続を終結する決定がされます(同法188条2項)。
 なお、債権者集会で再生計画案が否決された場合は、債権者集会の続行期日が定められてそこで可決されないときに再生手続は廃止されます(同法191条3号)。
 再生手続が廃止されると通常破産手続に移行します(同法249条、250条。牽連破産といいます)。