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Q&A 金融機関取引の基本

保証編

Q4

 Q3の場合において、当社取締役である私がグループ会社の大株主でもあるのですが、この場合にはどのような社内手続が必要でしょうか。また、もし手続をしなかった場合はどうなりますでしょうか。

A4

 本件も、Q3と同様、取締役会設置会社を前提に説明します。
 まず、Q3で説明したとおり、「多額の借財」に当たるかどうかの判断をしたうえで、取締役会決議などの必要な社内手続を検討します。
 その上で、本件の場合は、債務保証をする当社の取締役が、債務の保証を受けるグループ会社の大株主でもある、という事情があります。
 この場合に注意すべき規定として、会社法365条1項、356条1項3号があります。
 すなわち、取締役は、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするときは、取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない、とされています。
 このような取引を、利益相反取引(そのうち間接取引)といいます。
 この条項がストレートに当てはまるのは、会社が取締役個人の債務の保証をする場合です。
 もっとも、保証を受けるのが、取締役が代表取締役をしている他社である場合も、同様の手続が必要だと解されています(最高裁昭和45年4月23日判決)。
 また、保証を受けるのが、取締役が全株式を保有する他社である場合も、同様の手続が必要だと解されますが、それ以下の保有割合(過半数等)の場合は見解が分かれるようです(江頭憲治郎「株式会社法(第2版)」406頁)。
 もし本件も利益相反取引(間接取引)に該当すると判断した場合は、取締役会に対する重要な事実を開示した上で、その承認を受ける必要があります。
 この場合は、Q3で説明したような、特別取締役による取締役会決議で済ますことはできません。
 次に、この必要な手続をしなかった場合についてです。
 必要な取締役会の承認を経ないで行われた利益相反取引は原則として無効ですが、間接取引の場合は、取引の相手方(この場合は金融機関)の保護のため、会社(この場合は当社)は、金融機関が、当該取引(この場合は債務保証)が利益相反取引に該当すること及び当社が取締役会の承認を受けていないことを知っていることを主張・立証して初めて、金融機関に対し当該取引の無効を主張できるとされています(最高裁昭和43年12月25日判決。相対的無効説)
 このように、金融機関に対し無効を主張できる場合は限定されています。