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Q&A 金融機関取引の基本

その他編

Q3

 預金が時効により消滅することはあるのでしょうか。

A3

 預金とは、消費寄託契約(民法666条)に基づく預金債権です。
 一般に債権の消滅時効期間は10年ですが(同法167条1項)、商行為によって生じた債権の場合は5年です(商法522条本文)。
 預金者が会社の場合は、預金は商行為によって生じた債権として消滅時効期間は5年となります(同法522条本文、503条、会社法5条)。
 ちなみに、預金者が個人など商人でない場合は、金融機関が銀行のときは消滅時効期間は5年ですが(商法522条本文、502条8号)、金融機関が信用金庫や信用組合の場合は10年となります(民法167条1項)。
 次に、消滅時効が進行を開始する時点(起算点)については、「権利を行使することができる時から進行する」とされています(同法166条1項)。
 そうすると、普通預金の場合は預入の時、定期預金の場合は満期の時となります。
 (なお、自動継続特約付きの定期預金の場合は、預金者による自動継続停止の申入れがされた後に到来する満期日とされています(最高裁平成19年4月24日判決))。
 しかし、普通預金に預け入れてから5年が経過することなどいくらでもあります。
 ここで、時効の中断というものがあります。
 時効が中断されると、時効の進行はいったんその時点で中断され、改めてその時点から進行することになります。
 時効の中断事由としては、法律上、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認の3つがあります(同法147条)。
 ①の請求とは、裁判上の請求を言いますので、単に預金者が銀行に対し裁判外で払戻しの請求をするだけでは中断事由とはなりません。
 ③の承認とは、債務者が債務について承認することをいい、裁判上か裁判外かなどは問われません。
 預金の場合は、金融機関が払戻しをしたり、利息を記帳した通帳を交付した場合には、債務の承認があったものとされています。
 したがって、預金は実際には、最後に払戻しを受けたり利息記帳した通帳の交付を受けた時点から5年(ないし10年)を経過した時点で消滅時効にかかることになります(裁判上の請求等をした場合は別ですが)。
 しかし、仮に消滅時効にかかったとしても、その時点で自動的に預金が消滅するわけではありません。
 法律上、「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。」(同法145条)とされており、時効は当事者の援用が必要だとされています。
 そして判例は、「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときに初めて確定的に生ずる」(最高裁昭和61年3月17日判決)としました(停止条件説といいます)。
 したがって、仮に時効期間が経過して消滅時効にかかったとしても、金融機関から時効援用の意思表示がされなければ、預金は消滅しません。
 なお、金融機関はこうした預金(睡眠預金といいます)についても通帳や印鑑により払戻しに応じる姿勢を示しています。
 以上の通り、法律上は預金が時効消滅する場合がありますが、実際上はあまり心配しなくてもよいといえます。
 それでも心配な場合は、定期的に預金の一部の払戻しを受けるなどして時効の中断をしておいてもよいのかもしれません。