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Q&A 金融機関取引の基本

その他編

Q2

 預金を第三者に譲渡することはできるのでしょうか。

A2

 預金とは、消費寄託契約(民法666条)に基づく預金債権です。
 債権は、原則として自由に譲渡できます(同法466条1項)。
 もっとも、当事者が反対の意思を表示をした場合にはこの限りではない(譲渡は無効)とされております(同法466条2項本文)。
 当事者の反対の意思表示とは、この場合は預金の譲渡禁止特約をいいます。
 預金通帳には通常、譲渡を禁止する旨の文言が記載されており、譲渡禁止特約が付されています。
 しかし、かかる譲渡禁止特約も、善意の第三者には対抗することができません(同法466条2項但書)。
 ここでいう善意の第三者とは、譲渡禁止特約の事実につき知らない第三者のことを言います(一般的な意味の「善意」とは意味が違います)。
 そうすると、預金の譲受人がかかる譲渡禁止特約について知らない場合は、譲渡が有効になりそうです。
 しかし、判例は、銀行預金債権に譲渡禁止特約が付されていることは少なくとも銀行取引につき経験のある者にとっては周知の事柄に属する、としたうえで、たとえ譲渡禁止特約につき善意の譲受人であっても、重大な過失があるときは悪意の譲受人と同様、譲渡によってその債権を取得し得ない、としました(最高裁昭和48年7月19日判決)。
 したがって、預金の譲渡は、譲受人が譲渡禁止特約を知っていた場合はもちろん、知らない場合でも重過失の第三者として譲渡が無効とされる可能性が高いといえます。
 もっとも、金融機関が譲渡につき承諾すれば譲渡禁止特約は解除されますので、どうしても預金の譲渡が必要であれば金融機関に承諾を申し入れるべきこととなります。
 さらに、預金の譲渡を譲受人が金融機関に主張するためには、譲渡人が金融機関に対して通知をするか、金融機関が承諾をしなければなりません(この通知又は承諾を債務者対抗要件といいます。同法467条1項)。
 そこで、上記の譲渡禁止特約を解除する旨の承諾の申入れにあわせて、債務者対抗要件としての承諾も申し入れることになります。