元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

トップページ > Q&Aデリバティブ編 > Q3

Q&A 金融機関取引の基本

デリバティブ編

Q3

 数年前に銀行から勧誘されてはじめた金利スワップが経営を圧迫しています。金利スワップとはどういう仕組みのものだったのでしょうか。

A3

 金利スワップは、デリバティブの一種です。
 デリバティブとは、伝統的な金融取引から派生した商品を総称したもので、金融派生商品とも呼ばれます。
 デリバティブと一括りにしてしまうと、比較的古くから行なわれている米や原油などの先物取引もデリバティブですし、貿易商社などが輸出入の際に使う為替先物予約もデリバティブですし、リーマンブラザーズが破綻した原因となったクレジットデフォルトスワップ(CDS)もデリバティブですし、また天候デリバティブなどというものもあり、実体をつかみにくくなります。
 主として中堅中小企業において銀行との関係で問題となっているデリバティブとは、通貨オプション契約やクーポンスワップ契約などの為替デリバティブと金利スワップです。
 これらのデリバティブは店頭デリバティブと呼ばれ、1998年のいわゆる日本版金融ビッグバンにより日本でも販売が解禁されました。
 ここで説明する金利スワップとは、一定期間変動金利と固定金利を交換するという取引であり、理解は比較的容易です。
 変動金利借入と合わせて導入することで、金利上昇リスクをヘッジすることができるという狙いがあります。
 しかし、近時、企業において金利スワップによる損失発生及び資金流出が問題となっています。
 これは、①予想を上回る超低金利の長期化という市場の要因と②金利スワップの商品の仕組み自体の要因、に分けられると思います。
 まず、①についてです。
 下の表は、貸出金利の長期推移です。
 (縦軸:%)
 貸出金利長期推移
 (日本銀行HP、全国銀行協会HPのデータをもとに集計・加工)
 3ヶ月TIBOR、6ヶ月TIBOR、短期プライムレート、長期プライムレート等の関係については、ニュース解説・コラム LIBOR問題2も適宜ご参照ください。
 上の表の3ヶ月TIBORや6ヶ月TIBORを見ていただくと、2001年頃から長期間0.1%に近い水準で推移していたところ、2006年の初め頃から上昇をはじめ、2007年の終わり頃から2008年の初め頃にかけて0.9~1%近い水準まで急上昇しています。
 この頃は、ようやく銀行の不良債権問題も収束し、「いざなぎ超え」とも呼ばれる長期的な景気回復により、地価、株価や金利が上昇し、さらなる先高観も強まっていました。
 こうした中で、企業においても調達金利の上昇リスクをヘッジするニーズが高まり、金利を固定化するための金利スワップの販売が拡大したとみられます。
 しかしその後、2008年9月のリーマンショックに端を発する世界的な信用不安と景気後退により、金利は急低下に転じ、現在に至るまで超低金利が続いています。
 その結果、金利スワップにより変動金利受け、固定金利払いのポジションを取った企業において一貫して金利差の支払超過による損失拡大及び資金流出が発生するようになりました。
 ただし、結果としては企業の損失拡大及び資金流出となりましたが、当時の金利先高感の中でのリスクヘッジの結果ですので、やむを得ない面もあると言えます。
 しかし問題は、②の金利スワップの商品の仕組み自体に問題があるケースがあることです。
 当時銀行が販売した金利スワップの変動金利として多く用いられたのは、3ヶ月TIBORや6ヶ月TIBORです。
 金利スワップを導入した企業において、借入金の支払金利が3ヶ月TIBORや6ヶ月TIBORに連動していたのであれば、この金利スワップの導入はリスクヘッジ効果を発揮するといえます。
 しかし、多くの中堅中小企業では借入金の支払金利は短期プライムレート(短プラ)に連動していることが多く、金利スワップで受け取る変動金利と合っていないという問題がありました。
 その結果、企業においては、借入金の支払金利として短プラ(+スプレッド)の金利を負担するとともに、金利スワップでも結果として割高な固定金利の支払いを余儀なくされる一方で、受け取るのは低く張り付いたままのTIBOR(+スプレッド)にとどまったということになりました。
 企業の資金調達金利の実情を踏まえれば、金利スワップの変動金利としては短プラを用いるべきであったのに、あえてTIBORを用いたためリスクヘッジ効果も疑わしいものとなり、これが商品の仕組み自体の問題といえます。
 こうした金利スワップについては裁判でも争われており、上記と同様の仕組みの金利スワップ契約を無効として銀行に支払いを命じた判決がありましたが(福岡高裁平成23年4月27日判決)、最高裁で判断が覆され、契約は有効であるとして顧客企業側逆転敗訴となりました(最高裁平成25年3月7日判決)。
 この判決については、Q&A 金融機関取引の基本 デリバティブ編Q1で具体的事案や判決内容を簡単に紹介しておりますので、適宜ご参照ください。
 また、さらに問題を複雑にしそうなのが、LIBOR不正操作問題です。
 TIBORは直接関係ないですが、LIBORを採用している金利スワップもあると思われます。
 LIBOR不正操作問題による金利スワップへの影響については、ニュース解説・コラム LIBOR問題3で簡単に記載しておりますので、適宜ご参照ください。