元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

トップページ> 金融検査マニュアル・自己査定

金融検査マニュアル・自己査定

金融検査マニュアル導入の経緯

 「金融検査マニュアル」とは、金融機関の監督官庁である金融庁が金融機関に定期的に検査(金融検査と言います)に入る際の検査官の手引書という位置づけのものです。
 金融検査マニュアルは、そう遠い昔からあるものではなく、1999年に初めて策定されました。
 通常の企業からみれば、監督官庁が検査に入ってくるなどということはあまりないと思います。
 民間企業の活動は私的で自由な活動ですから、特に何か刑事的、行政的な問題を生じさせた場合でなければ、政府から介入されることは本来ありません。
 しかし、銀行などの金融機関は、普通の民間企業とは異なり、多くの人々から預金を預かり、それを企業に融資したりして運用していますので、あまりに勝手なことをして人々の大切な財産である預金を失わせてしまったり、企業への融資が滞ってしまっては困ります。
 「社会の公器」とも言われるように、公共的な役割も担っているのです。
 それでも、経済が成長していたころは、金融機関が多少のことをしても潰れるということはなく、銀行の不倒神話も信じられていました。
 ところが、バブル崩壊後、銀行の融資先企業が経営に行き詰まることが増え、巨額の不良債権となり、銀行の経営を圧迫するようになりました。
 そうした中、1997年に都市銀行の一角を占めていた北海道拓殖銀行が不良債権問題から経営破綻し、北海道経済は大混乱に陥りました。
 ちなみに、私はこの頃日本開発銀行・日本政策投資銀行の札幌の支店で融資担当者として貸し渋り対策融資などに取り組みましたが、拓銀破綻のあおりで企業の連鎖倒産が続出し、優良企業でさえも目先の資金調達に苦労している姿を目の当たりにして、銀行が破綻したときの影響のすさまじさ、恐ろしさを思い知りました。
 その後も日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などが経営破綻し、都市銀行や地方銀行も再編に追われるなど、金融システム不安が深刻化し、銀行不良債権問題の解決が最大の政策課題と位置づけられました。
 前置きがやや長くなってしまいましたが、金融検査マニュアルは、こうした背景の下で策定されました。
 金融機関が知らない間に巨額の不良債権を抱え込んで突然破綻してしまうようなことがないように、監督官庁である金融庁が定期的に検査に入り、金融機関の資産の状況や業務の体制などをチェックし、健全な経営を維持できるようにするのが目的です。
 では、金融検査ではどういったことがチェックされるのでしょうか。

自己査定

 ここでは、債務者企業にとっても影響が大きい「自己査定」について取り上げます。
 金融機関の体制整備などについては省略します。
 拓銀が破綻したあたりまでは、どういう債権をもって不良債権とするかなどの明確な基準もなく、銀行がどの程度の不良債権を抱えているかについては分かりませんでした。
 そこで、金融機関が自行の債権を、債務者企業の信用力や担保・保証による保全状況等に応じて細かく分類し、回収の危険性に応じて償却・引当をあらかじめしておき(これらの作業を「自己査定」と言います。)、これを金融庁が検査してチェックすることで、不良債権の巨額化や突発的な経営破綻を未然に防ごうとしているのです。

信用格付

 自己査定の作業は、まずは信用格付から入ります。
 信用格付とは、その名の通り、債務者企業を信用力に応じて1格から10数格などと格付します。格付する際の基準は銀行毎に異なりますが、基本的には決算数値などの定量情報と経営者の資質や能力などの定性情報から判定します。

1   次ページ