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事業再生

事業再生(私的整理・私的再生)

 事業再生(私的整理・私的再生)とは、企業側から見れば事業の再生ですが、そのためには銀行など金融機関からの債務カット(ここではリスケによる再生は含みません)が必要不可欠な要素であり、金融機関の側から見ればあくまで債権のカットです。
 そして、これが事業再生の手段であるとともに、ある意味目的でもあります。
 金融機関が債権をカットするかどうかは、会社更生等の法的整理でなければ完全に任意です。
 したがって、事業再生(私的整理・私的再生)では、金融機関から債権カットを引き出すための交渉が必要になります。
 金融機関の債権カットは、そのまま金融機関の損失ですから(既に引当をしている場合はそのまま当期の損失になるわけではないですが)、通常は簡単にそのような要請に応じることはありません。
 ただ、一定の要件が満たされた場合に、例外的に応じるケースがあります。

事業再生のポイント

 事業再生についての論文や書籍は多く出ており、様々な解説がなされておりますが、私自身が元銀行員として実際に多くの企業の事業再生(私的整理・私的再生)の支援に取り組んだ目線から言えば、ポイントは、①事業の収益性及び将来見通しと回収の極大化、②負担の公平性、③地域や社会における意義、の3点に大きく集約されると言ってよいと考えます。
 その中でも、①は最も重要な大前提であり、これが満たされなければ、いくら②③が満たされても債権カットがなされることはありません。

①事業の収益性及び将来見通しと回収の極大化

 ①は、事業再生計画による債権回収の額が、破産等の法的整理の場合の配当見込額を上回っていることを大前提としつつ、計画の実現可能性が確実に見込まれ、その結果債権回収額が極大化することが必要となります。
 これはまさに、金融機関の融資・リスケ審査で述べたような目線で厳しく審査されることになりますので、詳しくはそちらをご覧いください。

②負担の公平性

 ②も重要です。
 まず、法的整理では債権者平等の原則が働きますから、私的整理・私的再生でも基本的に同様の扱いが求められます。
 もっとも、債権者は仕入先などの取引債権者と銀行などの金融債権者に大別され、前者までカットしてしまうと以後仕入などができなくなって事業継続が不可能となり、再生どころではなくなってしまう恐れがあります。
 そこで、私的整理・私的再生では、後者の金融債権者のみをカットの対象とすることが多いです。
 この処理は、民事再生法などの法的再生でも一定の要件の下で認められているところであり、金融機関も比較的受け入れやすいところです。
 次に、株主や経営者との関係です。
 銀行などの金融機関は債権者ですから、会社財産からの弁済・配当を受ける順序は株主より優先します。
 金融機関としては、株主より債権者が先に毀損することは受け入れ難いですから、債権カットする前提として、株主責任として100%減資を求めることになります。
 また、債権カットを要請する事態に至ったのは経営者の経営責任でもありますから、経営者の退陣や私財提供などの経営者責任も追及します。
 もっとも、会社更生法や民事再生法で旧経営者が引き続き経営者として残ることも認められましたので(このような経営者をDIPと言います)、私的整理・私的再生でも認められる場合があります。
 特に中堅中小企業は経営者の属人的な技術・ノウハウや人脈等に事業を依存していることが多いですから、DIP型の事業再生とする必要性は高いでしょう。
 株主責任についても、上場大企業で個人株主が多いような場合には、99%減資などといって実際は不問に付している例も見られます。

③地域や社会における意義

 ③は、①②が満たされた上で、それを補強するような要件と言ってよいでしょう。
 企業は通常その地域で従業員を雇って、製品の製造、商品の仕入販売、役務サービスの提供等をしていますから、従業員の雇用、地域・社会の利便という面で必要な存在であることが多いでしょう。
 こうした企業が法的倒産してしまうと、雇用が失われたり、商品や役務サービスの提供が滞ったりして、地域や社会に悪影響を与えることがあります。
 金融機関が債権カットしてまで事業再生を支援するというためには、こうした悪影響を防ぐという大義名分も必要となってくるのです。

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