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中小企業金融円滑化法

金融検査マニュアルの改訂

1 それにしても、法律で努力義務を規定しただけなのに、なぜ金融機関は本来ハードルが高いリスケをここまで積極的にするようになったのでしょうか。
 金融機関が、中小企業の金融円滑化という政策目標に積極的に協力して取り組んだという面ももちろんありますが、やはり大きいのは金融検査マニュアルの改訂でしょう。
2 まずは、少し長くなりますが、従前の取扱について以下簡単に触れておきます。
 金融検査マニュアル・自己査定で述べましたとおり、債務者企業の債務者区分が要管理先以下になると、金融機関は大幅な貸倒引当金計上が必要となります。
 要管理先とは、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部又は一部が要管理債権である債務者をいい、要管理債権とは、要注意先に対する債権のうち「3ヶ月以上延滞債権(元金又は利息の支払が、約定支払日の翌日を起算日として3ヶ月以上延滞している貸出債権)及び貸出条件緩和債権(経済的困難に陥った債務者の再建又は支援を図り、当該債権の回収を促進すること等を目的に、債務者に有利な一定の譲歩を与える約定条件の改定等を行った貸出債権)」をいいますので、返済猶予等のリスケを受ければ、貸出条件緩和債権となり、その債務者企業は原則として要管理先になります。
 したがって、リスケに応じる→貸出条件緩和債権になる→債務者企業が要管理先になる→大幅な貸倒引当金を計上する→金融機関の損失が拡大する、ということになります。
 金融機関が本来リスケに慎重なのは、直接的にはこのような影響があるからです。
3 もっとも、金融検査マニュアルは、従来から、中小・零細企業等については、「債務者区分の判断につき、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする」としておりました(金融検査マニュアル・自己査定(別表1)1(3))。
 さらに、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」が策定され、中小・零細企業等の債務者区分の判断に係る検証ポイントや運用例が示されています。
 この中でも影響が大きいのは、貸出条件緩和債権についての判断基準です。
 別冊(事例22)によれば、返済猶予のリスケをした場合でも、①②不動産担保等により保全されていることから信用リスクが極めて低い水準になるものと考えられる貸出金については、条件変更時の貸出金の金利水準が金融機関の調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)を下回るような場合を除き、原則として、当該貸出金については、貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しない、②黒字化を織り込んだ収支計画等が策定されている場合には、条件変更時の貸出金の金利水準が金融機関の調達コストを下回るような場合であっても、収支計画等が合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たしていれば、貸出条件緩和債権には該当しない、としています。
 すなわち、返済猶予等のリスケをしても直ちには貸出条件緩和債権とはならず、当該債務者企業も要管理先にならない、ということになります。

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